夜ノ七不思議

オカルティックとエロティックの見事な融合

オカルティックな事物に出会った人々の数奇な運命をエロティックに描く連作短編集です。

個人的には海野螢先生の前作の連作短編集『あるいは秘密でいっぱいの世界』のオカルティックやSFに対するリスペクトとエロス表現が溶け合った卓絶したストーリーテリングに圧倒されたので、期待して読んでみましたが、今回の単行本は海野螢先生の良さが出ていないと思いました。

『笑ウ人形』
色気たっぷりのセックスシーンは素晴らしかったのですが、ラストにどんでん返しのラストや伏線回収などの意外性を感じませんでした。

『廃墟ノ歩キ方』
ラストページまで謎が残るストーリーで、本書内で最もオカルティックな雰囲気を味わえる話だと思いました。

『逢魔ガ時ノ電話ボックス』
描写不足だと思いました。主人公と鈴が幼馴染の関係である設定を冒頭に明かしたらセックスに至るまでの青年の心情がもっとわかりやすいと思いました。

『開カズノ教室』
幽霊がふたりのセックスにちょっかいを出している描写がわかりづらかったです。幽霊の手を『廃墟ノ歩キ方』のように黒く描き分けたり、幽霊を男性にしてこっそり由利に手コキやフェラチオをさせるようなイタズラ要素があればもっとわかりやすいと思いました。

『地図ニナイ駅』
都市伝説「きさらぎ駅」を彷彿とさせるストーリーですが、ストーリーにダイナミックさがほぼなく、どんでん返しのラストや伏線回収などの意外性を感じませんでした。

『アナタノ願イ叶エマス』
オカルティック要素とエロスの絶妙な融合、魅力的な女性キャラクター、そしてどんでん返しのラストといった要素が見事に融合していて、本書の中で最も素晴らしいストーリーだと思いました。

『オヤシロ猫』
今話に登場する少女は本書の表紙を飾っている少女で、いわば本書の「顔」とも言える物語なのですが、ストーリーにダイナミックさがほぼなく、どんでん返しのラストや伏線回収などの意外性がないと感じました。

総じて見てみると「唯一無二のコマ運び」「魅力的な貧乳女性キャラクター」「濃密なセックス描写」などの要素は素晴らしかったのですが、ストーリーの突き抜けた意外性やどんでん返しのラストが無い「あと一歩惜しい」だと思う話がほとんどでした。

海野螢先生の次回作にも期待しています。